HIPHOPの本質:crystal-zの新曲「Children Story(feat. UUUU)」が問題視するバビロンシステム

衝撃作「Sai no Kawara」で知られるcrystal-zがUUUUと共にまたヤバい曲を出していた。
またもや社会問題に大胆に切り込むcrystal-zの姿勢が如実に表れている。この楽曲の背景にある事件の概要や、crystal-zがもつHIPHOPの本質的な品格を伴った音楽性等について軽く掘り下げてみる。

今回のレビューをcrystal-zさん本人が見つけてくださったようで、Xで紹介してくれていました。こちらこそありがとうございます。

crystal-z「Children Story (feat. UUUU)」

今回も社会的なテーマを持つ楽曲だが、客演にUUUUというサグいラッパーを迎えていることもあり、「Sai no Kawara」とは別ベクトルのタフさを感じるものになっている。HIPHOPの本質を捉えて問題提起した楽曲であり、非常にHIPHOP音楽として意義深い作品。沖縄の高校生が沖縄署の警察官に警棒で失明させられた事件に関する歌であり、その収益は被害者に全額寄付されることが発表されている。

crystal-z「Children Story (feat. UUUU)」- Amazon musicはこちら

crystal-zについて


crystal-Zは、日本のラッパーであり、特に社会問題をテーマにした楽曲で注目を集めている。医者でもある。今回の新曲を聴くに、外科医なのだろうか。彼の代表作「Sai no Kawara」は、医学部不正入試問題を題材にしており、多くの人々の心に響いた。今回の沖縄の高校生失明事件についてもラップで問題提起し、収益を被害者に寄付するなど、社会的な活動にも積極的。彼の音楽は、個人的な経験と社会的なメッセージを融合させたものが多く、リスナーに深い印象を与えている。医者兼ラッパーを名乗るアーティストや活動家はわりと存在する気がするが、その中でcrystal-zほどHIPHOPを体現し活用し理解している者はいない。てか自分で書いておいてなんだが医者兼ラッパーっていうチープなレッテルはcrystal-zに対して失礼だ。

Sai no Kawara


「Sai no Kawara」(さいのかわら)は2020年6月10日にYouTubeで公開された。この曲の内容はcrystal-zが自身の経験を基にしており、医学部入試における年齢差別や不正入試問題をテーマにしている。楽曲は公開後、さまざまなメディアに取り上げられ、YouTube上で100万回以上再生されるなど話題を呼んだ。机に向かって勉強したり本を読んだりするサムネが特徴であるlo-fi HIPHOPをジャケ・ビデオ(crystal-z自身がアニメーションを手がけているらしい)やビートに取り入れており、歌詞にはcrystal-zが受験生として直面した苦悩や希望が込められている。

本当は合格していた医学部入試――「年齢で弾かれた」男性はいま - Yahoo!ニュース
去る6月、YouTubeに投稿されたあるミュージックビデオが話題になった。楽曲のタイトルは「Sai no Kawara」。 制作したのは、2018年に発覚した医学部不正入試の被害者男性「crystal-z(クリスタル・ズィー)」(35)だ。...


楽曲はApple MusicやAmazon Musicなどの音楽ストリーミングサービスでも配信されており、2020年7月11日にはサブスクリプション版もリリースされた。(Amazon musicはこちら


医学部入試の不正問題に対する批判的な視点と、個人的には、月並みなおためごかしではない、「何かを始めるのに年齢は関係ない」「努力は必ず報われる」というポジティブバイブスを感じられる一曲。特に、社会人になり資格取得のために勉強している人や、活計を立てるために新しく何か始めた人には必ず刺さる。

沖縄市の高校生失明事件


2022年1月27日未明、沖縄県沖縄市宮里で発生した高校生失明事件は、17歳の男子高校生がバイクを運転中に警察官と接触し、右目を失明する重傷を負った事件。この事件はSNSでの情報拡散が騒動を引き起こしたのもポイント。

事件の経緯


高校生はバイクで走行中、警察官が職務質問を試みた際に接触し、警棒を振りかぶった。結果として高校生は右目に大けがを負い、失明するに至った。詳細については意見が分かれており、警察側は「暴走行為を取り締まるための職務質問中に接触した」と説明していたが、高校生側は「警察官にいきなり殴られた」と主張していた。

騒動と抗議

事件後、27日午後11時から28日午前4時にかけて、約300人から400人の若者が沖縄署を取り囲み、投石などの抗議行動が発生した。この騒動は、警察署の正面玄関や車両に対する破壊行為を伴い、地域社会に大きな影響を与え、メディアでも大きく取り上げられた。

法的措置

事件から9カ月後の2022年11月2日、沖縄県警は巡査を特別公務員暴行陵虐致傷の疑いで那覇地検に書類送検した。2023年12月25日、那覇地方裁判所は、被告の行動が職務上の注意義務を怠ったものであると認定し、罰金100万円の有罪判決を言い渡した。また、当該警察官は停職1カ月の懲戒処分を受けた。

風評被害

SNSやネット記事のコメント等では、警察側による過失だけでなく、高校生側にも非があるのではないかと意見もあり、「高校生が暴走行為をしていた」などという根も葉もない不良のイメージに起因する噂も書き込まれていた。しかし、これらに関しては全くのデタラメであり、警察側が行った説明においても、被害高校生は暴走行為をしていないのはもちろん、ノーヘルや無免許でもなく、違反もしていないとはっきりと明言している。

以下、沖縄タイムス+プラス、【沖縄の高校生失明事件】 警官による暴行を謝罪 撮影不可だった県警本部の「説明会」を全文公開より抜粋

Q. SNSでの誹謗(ひぼう)中傷、デマ、差別的な書き込み、差別に基づく書き込み、沢山あった。高校生は傷ついたと言っていた。捜査一課は、それは嘘だと発表していたが、もっと早めに分かっている事実や、デマや差別を打ち消す発表は早めに必要だったと思うがどうか。

A. これは最後皆さんにお願いしようと思っていたが、SNSで被害者に対する心ない書き込みあったのは承知している。警察としては、少しでも減らすために、捜査の途中途中のレクで被害者に対する事実と異なる、暴走行為、ノーヘル、無免許など、あるいは署への襲撃事案への関与など、そういうことはなかったと繰り返し申し上げてきた。マスコミ各社の皆さんが理解いただいて事実を報道してくれたおかげでだいぶ改まったと思うが、今後も、被害者に対するSNSでの誹謗(ひぼう)中傷がなくなるような報道をお願いしたい。

【沖縄の高校生失明事件】 警官による暴行を謝罪 撮影不可だった県警本部の「説明会」を全文公開 | 沖縄タイムス+プラス
(資料写真)沖縄県警 沖縄市の路上でバイクに乗った高校生が警察官に暴行され失明した事件で、県警は2日に那覇市の県警本部の一室に記者を集めた「説明会」(レク)を開いた。その質疑応答を沖縄タイムスプラスで全文公開する。

crystal-zのラッパーとしての偉大な行動

「Sai no Kawara」で順天堂大学を諦め、別の大学を受験するために飛行機に乗りこんだ、というリリックがあったが、沖縄の大学だったのかな。沖縄で医学部だと琉球大学だろうか。偏差値70以上あるんじゃないの?天才?30過ぎて朝から晩まで図書館こもってたっていう努力の天才でもあるが、普通に地頭も相当いいはずだ。ちなみに俺も30歳すぎて勉強するために図書館にこもってた時期があり、「Sai no Kawara」を聴いて自分を奮い立たせていた。だが、頭が悪く人の何倍も努力しなければならず、ふとした時にRHYMESTERの「ONCE AGAIN」が脳内に流れてきて涙が溢れてきたことがある。平日の図書館で泣く三十路すぎのおっさん、はたから見ると怖かっただろうな。ヤンハスの「Win or Lose」も当時よく聴いてた。

沖縄に行って、医学の道に進み、そこで今回もまたバビロンシステムに蹂躙された事件に関わることになるなんて、何て数奇な人生なんだ。

今回の曲は「Sai no Kawara」で見せたような落ち着いた雰囲気ではなく、crystal-zのアグレッシブな側面も出ていて、真っ向から批判するスタイル。

春秋に富む高校生の右目から光を奪っておいて、その代償がたった100万円の罰金と停職1カ月とはこれいかに。SNSでの高校生に対する心無い書き込みの内容は、警察への襲撃事件から連想している可能性もあり、俺も最初聞いたときは「この高校生の仇討ちのために300〜400人の若者が集まったってこと?どんだけ人望あるんだ」と思ってしまったのだが、襲撃事案への関与はないと警察側が明言しており、俺もメディアやSNSの偏向報道・イメージ操作によって惑わされていたことがわかった。


この高校生とは関係ない若者がそれだけの数集まるってのも沖縄の若者の反体制を軸とした結束力の力強さを感じられてそれはそれですごいし、あれだけ騒がれた襲撃事件がなかったら失明させられたって事実も隠蔽されていたかもしれないが、この辺はcrystal-zも「音楽で攻撃しよう」とたしなめている。

「Children Story (feat. UUUU)」は、HIPHOPというカルチャーの成り立ち的側面から見て、日本語ラップ史に残る名曲だと思う。「Sai no Kawara」も枯淡な味わいの中に告発的要素やアイロニックなフックを盛り込んでいる名曲として名高いが、スリックリックの曲名をサンプリングした今回は、より直接的に警察をディスりつつ、ダブルミーニングや完成度の高い押韻とリリックが仕込まれていて、単なるコンシャスラップ・レベルミュージックの域を超えた作品になっている。フックもめちゃカッケー。ジャーナリズム精神を全面に打ち出したラッパーの曲は多く、般若の「2018.3.2」にも相当食らったが、楽曲の衝撃度はChildren Story (feat. UUUU)の方が俺的には高い。


また、イメージ的には対局にいるサグめのUUUUを客演に迎えている点もポイント。「Sai no Kawara」では見せなかったcrystal-zの質実剛健なラップの意外性に加えて、この2人の組み合わせというさらなる意外性。最高かよ。crystal-zからUUUUを誘ったらしい。
バビロンに対抗する手立てとしてcrystal-zとUUUUが手をとりあったってことがkoshyばりに激アツ。
この楽曲による収益はすべて被害少年に寄付するってところもナフリスペクト。

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