ラッパーには、ラッパー独特の単語や言い回しが あって、ヒップホップファン(=ヘッズ)は当たり前のようにそれらのテクニカルタームを理解し、使用している。その共通言語感覚が日本語ラップファンとしては時に楽しいのだが、最近のフリースタイルラップブーム等を鑑みても、排他的に日本語ラップクラスタだけでこのシーンを楽しんでいくのはもったいない。
ラッパーが使う専門用語は多岐にわたる。高校生ラップ選手権でレイチが使っていた「バイブス」や「キックス」もその中の1つだ。バイブスの意味は「雰囲気とか気分」とかいった意味で、文脈によってそのニュアンスは幅広く異なる。「キックス」はスニーカーの意味。これらは黒人英語のスラングを元にするものが多いと思うが、日本独自のスラングももちろんある。「ディスる」はその代表格であり、元はラッパーがよく使っていたものだったが、少し前から一般の人が使う若者言葉としても定着している。俺が最初に「disる」を聞いたのは確かm-floのcome againの歌詞「こんなに待ってても君にdissされるし」か、キングギドラの「リアルにやる」のKダブのバース「どんなにしてもうちは母子家庭ディスされ方も少しじゃねえ」だったと思うが、この頃は今ほど世間に「ディスる」という言葉は認知されていなかった。ただ、日本語ラップ界ではもっと前から当たり前のように使われていたんだろうと思う。
日本独自の用語としては他に ジブラが言い出した「ヨンパナイ」(半端ないよりもっと半端ないという意味)や「女子」(専門用語でもなんでもないがジブラとかライムスターがよく言ってた気がする)」や、DS455をはじめとする横浜のウェッサイ勢たちが横浜のことを「ロコハマ」と称しているなど、ユニークな表現がいっぱいある。
よんぱない酔っ払い!
個々のラッパーを見ても、それぞれが押しているフレーズや、知ってか知らずかよく口走る口癖があって、それぞれ違ってみんないいのでここで有名なものいくつかピックアップしてみようと思う。
TWIGY 「聴きなっよー」
ハハイ!、まずは聴きなよこちら、「聴きなyo!」リリックの中にはあまりないかもしれないが、随所に忍ばせているこのシャウト。「俺のラップを聴け」というシンプルなメッセージ。「聴きなよ」といえばツイギーだ。ツイギーのオリジナルな歌声とフロー最高だから皆聴きなよー!
DABO 「ご拝聴」「フダツキ」「デッパツ」
この言葉を流行らせたいのかわからないが、「ご拝聴」はリリックの中によく出てくる。しかしこの「ご拝聴」は適切な日本語ではないので、うっかり公の場で使ってしまわないようにDABOファンは注意しなければならない。謙譲語に「ご」をつけるのは正しい日本語でないようだ。「ご清聴」ならOKだ。でも拍手喝采のイントロでは「ご清聴」とも言ってる。
そして自らをMrフダツキとも名乗るDABO。「札付き」という言葉は「札付きの~」というように後の言葉を形容する言葉なので、札付きの何なのだ?とワルなのか?と昔はよく思っていた。Notorious B.I.Gリスペクトかな?
「デッパツ」は「出発」の意。
YOU THE ROCK★ 「とか言っとくー!」
おしゃべりハードパンチャーのユウザロックはラジオ等で何か適当なことを言ったあと、「とか言っとくー!」と頻繁に言っていた。YOU THE ROCK★リスペクトしてるぜ~とか言っとくー!
MACCHO(OZROSAURUS) 「耳元だぜ」
ハマの大怪獣オジロのマッチョ。「Check me now 耳元だぜ」ということ多し。俺がいるのはお前の「耳元だぜ」ということなんだろうか。カッコイイ!俺は皆が見てる画面の中にいるぜ(意味不明)!
SEEDA 「ナーミー」
「318STUDIOユナーミー??」これはもう口癖の域を超えていると思うが、SEEDAは頻繁に「ナーミー」(ナーミン)と言う。曲中でもしっかりと言っている。頻出度はかなり高い。ユノワラミーンを省略して「ナーミー」らしい。ユノンセィン?とかと同じような意味で「言ってることわかるよね」みたいなことだろう。ナーミー?DINARY DELTA FORCEのディガー、DUSTY HUSKYもよく言ってる。ナーミー?
D.O 「メーン」「~って話」
メーンはリンカーン出演時にかなり話題になったが、「~て話」ってのも、D.Oはよく言う。鼻にかかった声で語尾に「~ってハナシ」とつけるだけでD.Oっぽい喋り方に近づけるので是非やってみよう。ラッパーの口癖について書いてるって話!チェックしとけメーン! 俺D.Oのファンだって話!
ZEEBRA 「ヨンパない」「~してくんね!」
「ヨンパナイ」は半端ないの度合いがさらに甚だしいという意。
「~してくんね!」は「アルバム出すんでチェックしてくんね!」という感じで使う。ZEEBRAは完全に意識的に使っている。ツイッターでもたまに言っている。
あと、「I’m still No.1」の歌詞「そろそろ行くぜみんな適電」の「適電」の意味がずっとわからなかったのだが、俺と同じような疑問を持っていた人が随分前にツイッターで質問していた。
「適当に電話する」の意です。RT @sYMATOYA: @zeebrathedaddy 長年の疑問なんですが“そろそろ行くぜ皆適電”の“皆適電”ってどーゆー意味ですか?
「適電」は「適当に電話する」という意味とのことだ。当時は使っていたのかな。一般的には「適切に節電する」という意味もこの「適電」にはあるらしいが。日本語ラップを十分に楽しむにはリテラシーもちゃんと備えなければ。
UZI 「うぇいよー」
よく意味はわからないが盛り上げたいときとか盛り上がってるときに言うだろうか。フリースタイルダンジョンでは言いまくっている。昔は言っていなかったような気がするが。
Kダブシャイン 「そんな感じぃ」
曲の終わりや、自己紹介のフリースタイルの後で「そんな感じぃ」と締めくくること多し。どんな感じやねん!と突っ込みたくなるようなときもあって、口癖なんだな、と感じる。少しアホっぽいけどかわいい。
RAU DEF 「やってんもん」
最近あまり聞かなくなったが、ZEEBRAとのビーフ時には「やってもん」がインターネットメディアに轟いていた。
サイプレス上野 「よっしゃっしゃす」
キャッチフレーズ的な言葉。サ上と言えば「よっしゃっしゃす」だ。あと、サ上は最高のことを「最core」(サイコア)という。
童子-T 「テキツー」
恐らく、「テキトー」の意味だと思うが、童子-Tの歌詞にたまに出てくる「テキツー」。
本人とその周辺はよく使っていたのかな。いやしかし、なんだ、「テキツー」って。童子からしか聞いたことない(俺も昔童子の真似して「適当」の意味で言っていたが、文脈から判断するのが容易いので相手には伝わっていた。俺の言い間違い、もしくは相手の聞き間違いと思われていたかもしれないが)
TKda黒ぶち 「〜と思ってる」
NEWS RAP JAPANを見ていて思ったが、即興性が高まるにつれ、TKは「〜思ってるぜ」と言いがちだ。
以上、もっとあると思うが、とりあえず、思いついた限りで書いてみた。
各ラッパーのフリースタイルラップの口癖もいっぱいあるので、時間があればまた書いてみるって話!
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