【KjとJESSEの和解】公開処刑から20年、日本のヒップホップシーンに新たな希望

KjとJESSEがお互いのバンドで共作2曲を発表した。Kjは割とガッツリラップをしている。日本語ラップ界とも縁が深く、ZEEBRAとも仲のいいJESSEとKjの楽曲であれば、直接的なアンサーではなくとも、何かしら「公開処刑」後の動きや、Kjの感情の変化も読み取れるのではないかとヘッズは期待してしまう。

何より、「The BONEZ – Straight Up feat. Kj」ではGrateful DaysでサンプリングされたスマパンのTodayのリフが引用されている。

以下にKjとJESSEとの懐旧の果てのコラボを受けて、ZEEBRAとKjのビーフについて書いてみる。

ZEEBRAとKjのビーフ 公開処刑

背景とコラボレーション

1999年、ZEEBRAとKjは『Grateful Days』で初めてのコラボレーション楽曲を制作。この楽曲は、Dragon AshのKjが尊敬するZEEBRAをフィーチャーしたもので、当時の日本の音楽シーンに大きな影響を与え、またミクスチャーバンドとしてのDragon Ashの人気をさらに高めるきっかけとなった。『Grateful Days』の成功は、ZEEBRAとKjの関係を築く重要なきっかけとなり、両者は音楽的なパートナーシップを深め、共に新たな創造の可能性を模索する。しかし、その後の関係には緊張が生じ、音楽的な対立が浮上することとなる。

超有名な、「俺は東京生まれHIPHOP育ち〜」というフレーズ

当時、KjはZEEBRAを深く尊敬しており、その音楽スタイルに大きな影響を受けていた。ZEEBRAのラップスキルやステージングは、Kjにとって模範となり、彼の音楽的成長に大きく寄与し、シマウマに対するリスペクトは、彼らの初期のコラボレーションにおいて重要な役割を果たした。

対立の詳細

2002年、ZEEBRAはキングギドラの楽曲『公開処刑』でKjを名指しで批判。KjのラップスタイルをZEEBRAのパクリであると指摘し、声質やフロー、ステージングが酷似しているとの主張。このディスは、当時の日本のヒップホップシーンに大きな衝撃と共に二人の関係に亀裂を生じさせ、大きな禍根を残すことになる。 昨年の「BADHOP VS 舐達麻」も相当な話題を呼んだが、公開処刑に匹敵するほどの話題性はなかったと思う(惜しいところまではいったが)。それくらいの「事件」だった。

公開処刑収録のアルバム「最終兵器」がリリースされる際にZEEBRAが深夜の情報番組に出演していた(何の番組か忘れたが、ローカル局だったような気がする)のだが、その番組内でZEEBRAから視聴者へのプレゼント企画があり、クイズに正解した視聴者の中から抽選でプレゼントを贈るというものだった。

そのクイズの内容がZEEBRAからイケイケな様子で発表されたのだが、「俺らの最新アルバムで、公開処刑されたのは誰だ〜!?」と軽いノリでZEEBRAが発言したこと覚えている。え、そんなに軽薄な感じで公開処刑のことを扱っていいのか、と驚いてしまった。

ZEEBRAは、Kjのスタイルがパクリだと怒っていたが、確かにその言い分は悔しいかな、理解できる。

Summer Tribeがかなり酷い。俺は最初聴いたとき「ZEEBRA、また「真っ昼間」みたいな曲だしたのか。でもサマージャム’95をパーティーチューンにしたみたいなトラックでチルいぜ」とか思っていた。

「まさに盛り上げ隊長の参上だ」という歌詞のダサさが良い。フローも最高

ZEEBRAも自身の自伝で、「ラジオで偶然Summer Tribeを聴いて、俺こんな曲だしたっけ?て思った。」みたいなことが書いてあった。それくらい発声とフローとライミングが似てる。当時ZEEBRAは「I LOVE HIPHOP」を聴き、「そこまで言っちゃうの?」と違和感をもったのが最初で、その後パクリがひどくなってきていたが我慢しており、Summer Tribeでとうとう我慢の限界が来たという内容も自伝に書いてある。

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でも正直ZEEBRAも当時DMXに声が激似だったので「お前もやんけ」といろんなヘッズに思われていたが、TwitterなどでZEEBRAは自身のラップはDMXのパクリではなく、「むしろDMXより俺の方がスタイルを確立した時期は早い」と持論を展開しており一応腹落ちする内容ではあった。

このディスはKjに大きな影響を与え、彼の音楽スタイルを変えるきっかけとなり、『公開処刑』の後、Kjはヒップホップを封印し、他のジャンルにシフトした。ZEEBRA的には海外のHIPHOPシーンのようにエンタメ要素も含んだビーフも期待していたが、Kjは意気消沈。Kjはカリスマ性とともにラップのスキルも凄まじいものがあり、この芽を摘んでしまったZEEBRAのディスはここまでKjを追い込む予定ではなかったにしろ、日本のHIPHOPの歴史を一変させる罪深いムーブではあった。また、これ以降Kjは今回の曲のようにラップはする曲はあるが、フロー、リリック・ライミングのスキル的に全然成長していないと見受けられ、その点も公開処刑が影響してるのでは、と思う。ただ、公開処刑後にラテン音楽の方にDragon Ashはシフトチェンジしたのだが、惚れ惚れするほど素晴らしい音楽性を味わうことが出来た。なので結局Kjの才能はHIPHOPでなくても発揮されたということになる。ラテン期はまじでよかった。

和解の試み

ZEEBRAは、現在は公開の場で謝罪を行うなど、Kjとの和解を試みている。DJ DIRTYKRATESとしてDJするときも、ニヤニヤしたり苦笑いしながらGrateful Daysをかけたりしている。何かの配信イベントでDJをした際にはGrateful Daysをかけている途中音抜きして「そろそろ許してくんねー!?」「ごめんねしか言えない」と言い、公開処刑したことについて後悔はしていないかもしれないが、謝罪はしている。

2010年、ラッパ我リヤのQの結婚式でZEEBRAとKjは再会したが、当時の会話はぎこちなく、和解には至らなかった。ZEEBRAがKjに話しかけるも、非常にそっけない態度をされたらしい。過去の緊張がKjの心の中で未だに影を落としていることを示しており、両者の間にある溝を埋めるにはさらなる時間と努力が必要であることを浮き彫りにした。

2020年には、音楽特番『STAY HOME, STAY STRONG~音楽で日本を元気に!~』でZEEBRAとKjが共演し、音楽ファンの間で大きな話題となったが、大きな進展には至らず。

KjとJESSEのビーフ

KjとJESSEの間にも、長らく大きな溝があった。きっかけは、初対面で挨拶をしなかったとか、Kjが初対面でJESSEに対して舐めた態度をとったとか、ほんの些細なことだったらしい。音楽的にも近しく、また声質も似ているところがあったのでライバル視に端を発した敵視だったのかと思っていたのだが、そうではなかったようだ。JESSEの方からKjをヘイトしていた印象が強いが、敵意は楽曲にも表れていた。

UZUMAKI feat 竹中空人(大和EMCEE) – FREE FALL

Yo!一発騒ごうぜ!

大阪出身のハードコア・ミクスチャーバンド、宇頭巻がJESSE(竹中空人)を客演に迎えた2002年のシングル。

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竹中空人、TRIBALのパーカー着てるのかな。懐かしい。

UZUMAKIの代表曲はROCK SHOCK、TERROISMだが、ブルーハーツのTRAIN-TRAINのカバーも面白くてオススメ。1stアルバム「ELIMINATOR」は当時かなり聴いた。

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当時のミクスチャー/ラウド/パンクロックのバンドはドラゴンとか、山嵐とか、雷図とか宇頭巻とかスモーガスとかニコチンとかブラフマンとか、中2病心を刺激してくるバンド名が多いし、なんなら今でもイケてると思ってる俺はアラフォーおじさんだ。

JESSE(竹中空人)が「ZEEBRAに言わせりゃマジだせえ」とKjとは名指しこそしていないものの、ディスを送っている。この曲のJESSEのバースは語尾を「だぜ」で踏みまくっているのが好きなポイント。もはや韻を踏んでいるとは言い難いが聴きやすくて良い。完全にZEEBRA側に回っていたJESSEは、今でもHIPHOP畑のプレイヤーと絡むことも多い。昔から今に至るまで、(sic)boy、JUBEE、INFINITY 16はもちろん、ZEEBRA、D.O、L-VOKAL、ANARCHY、KM、T2K、DJ KEN-BO、餓鬼レンジャーなど、ガチのHIPHOP側の連中とも客演で参加したりSIMON JAPとYouTubeで対談したりと、非常に幅広いラッパーだ。二足のわらじって感じで、ラッパーとしてのJESSEと、バンドのボーカリストとしてのJESSEは結構違う。韻シストのBASIもバンドマンであり本格的なラッパーで、日本語ラップのシーンでは重要な人物であると思うが、BASIの場合はバンドのフロントマンとしての延長線上にソロのラッパーとしての活動を行っている感じがするが、JESSEの場合はラッパーとして顔、バンドマンとしての顔がそれぞれあり、またその他の側面もある(それはKjも同じだが)。人脈も凄くて、さまざまなストリートカルチャーと縁が深いし、ラッパーとの共演数も数知れず。そういえば、KENKENも漢と共演してた。

Kjも公開処刑前まではHIPHOP界隈のプレイヤー達との活動も盛んだったが、ラッパ我リヤを除き、TMC、麻波25、MOB SQUAD、SBK、Steady & Co.などやはり純日本語ラップ・コアジャパニーズHIPHOP濃度は薄い。

今回このようなコラボ曲によって手と手を取り合う形が顕在化したが、実は10年以上前にKjとJESSEとの和解はなされていた。Pay money To my Pain(P.T.P)のKやIkuzoneの早逝をきっかけに曲を制作する流れもあったようだが、コロナやJESSEの逮捕があり遅れてしまったという。

今回Pay money To my PainのベーシストだったT$UYO$HIの声かけによって両者のバンドのコラボが実現したようだが、俺はRIZEとP.T.Pのライブ(その時確かツーマンのツアーだったのかな?)に昔行ったとき、ベースの人が一番渋くてカッケーなと思って見ていて、もっと近くでみようと思いステージに近づいたらモッシュピットの濁流に飲み込まれ、かけていたメガネが吹き飛び、背中を負傷するという痛ましい記憶がエヴォークされているGENZAI!を生きるbut過去忘れないYeeeeeaaa。

背中が痛すぎてその時のライブはあまり記憶に残っていないが、Kのパフォーマンスと声には圧倒されたし、KjともJESSEとも違う哀愁を感じた。

俺はRIZEの曲で一番好きなのは「日本刀」なのだが、Kと共に「日本刀」を演ってくれて、ブチ上がり、その時は背中の痛みは消えていた。その後PARADOX体操をしてさらに痛みが増したが。

The BONEZ – Straight Up feat. Kj

DAのベーシストIkuzone(馬場育三)のことを「馬場」と呼び捨てにしてるJESSEにひっかかる。普通にインタビューなどでは「馬場さん」って呼んでるけど。音楽のキャリアの期間の長さはわからないが、Ikuzoneの方がかなり年上なはず。確かKjの自伝本かなんかで読んだが、IkuzoneはDA加入のオーディションを年齢制限にひっかからないように鯖を読むくらいKjとは歳が離れている。JESSEともかなり離れているだろう。

曲の途中でThe Smashing PumpkinsのTodayのリフが引用されている。

この部分は日本語ラップヘッズ的にはかなり興奮したところだった。T$UYO$HI曰く、静かな曲と激しい曲を2曲やりたかったが、1曲にまとめたとのことだったが、落ち着いたパートに入る際にTodayのギターリフが入る。

Grateful DaysでもTodayがサンプリングされているので、ZEEBRAに対するなんらかのアンサー的な意味合いもあるのか!?と意識を集中させてしまうところだ。ちなみにコーラスではP.T.Pの楽曲もサンプリングされており、P.T.Pのメンバーも参加している。

ねえ 互いに友と別れ」の「ねえ」がめっちゃKjっぽい。

Dragon Ash – Straight Up feat. JESSE

何かZEEBRAに対するアンサーめいた隠れた要素はないのか?と探していたら、DA側からまさかの2曲目が出ていた。

最初に聞いた感想として、口幅ったいこと言うようだが、ZEEBRAへのアンサーはどこかにないかを探しすぎて、Kjのラップが正直当たり障りのないことしか言わないなぁとか思ってしまった。

韻もありきたりで手垢まみれというか足跡まみれの踏まれ尽くしたライミングが目立つ。

あの日音楽を知った少年少女 吐いて捨てる程ある 通せんぼを 無我夢中に蹴破り当然今日も ステージで示すこれが表現方法

「少年少女」、「通せんぼを」、「当然今日も」、「表現方法」って昔めっちゃ聴いたことある押韻で、Kj自身も昔なんかの歌詞に入れてなかった?でもあえてこういう押韻をしているのかも。JESSEも今回のKjのラップと韻について大絶賛してたし。

最初にKjとJESSEのこの2曲を聞いたときは、期待感を超えるほどのものではなかったのだが、俺的にはドライブしながら聴くとめっちゃ滾ることがわかり、過去に隆盛を極めた日本のミクスチャーロックを思い出してテンションが車に乗るとテンションが爆上がりする。繰り返し聞いてるとKjやっぱかっけーわと思てくる。(1バース目とか特に)。今はこういうミクスチャーロックは鳴りを潜め、日本でも海外でもポップスやHIPHOPが主流の音楽となっているが、日本でもこの2曲をきっかけにミクスチャーロックがまた騒がれる時代がちょっと来てほしい。

ZEEBRAとKjが和解する日が来ることを願う

そもそもKjとJESSEが昔不仲だったってこともあって今回の2曲が注目されているが、 この勢いでZEEBRAとも仲直りすればいいのに。

何はともあれ、KjとJESSEが楽曲としてコラボしたという事実は日本語ラップヘッズにとっては有意義であることは間違いないと思う。ZEEBRAとKjの和解という喜ばしい未来にも少しだけ近付いたことだろう。

JESSEはHIPHOPとロックと架け橋であり、ZEEBRAとKjの架け橋でもある。

最近の日本語ラップシーンはおじさんたち仲直りの時代。MUMMY-DとILL-BOSSTINO、KREVAとMACCHOなど。KjとJESSEの共演はそれくらいの衝撃はあったが、日本語ラップ史的にKREVAと般若、ZEEBRAとKjが和解するほどのDeep Impactはない。

KREVAとMACCHOの架け橋はZORNだった。

ZEEBRAとKjの架け橋はJESSEとラッパ我リヤであるが、現在の様々なインタビューやYoutubeのKj・JESSE・T$UYO$HIの鼎談などで、JESSEとKjの口から「ZEEBRAとKj」についての話題が噯にも出ないことを見ると、Kjの心情は今でも察するにあまりある。

ただ、K DUBと生前のDLが和解したように、どちらかが天寿を全うするまでにはKjとZEEBRAがお互いに交情を深める日が来ることを祈る。

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